認知的不協和を生じさせる
“認知的不協和”は社会心理学用語である“cognitive dissonance”の和訳で、レオン・フェスティンガーが提唱した理論です。
一人の人間が、二つの矛盾した認知を持った場合、ストレスや不快感が生じます。
その結果人間は、そのストレスを解消もしくは軽減しようとして、行動したり認知を変化させます。
“認知的不協和”は決して特別なものではなく、日常的によく起きています。
よく例で挙げられるものがいくつかあるのですが、今回はイソップ寓話の『狐と葡萄』を例に挙げます。
物語のあらすじを書きます。
狐が、木の枝を這っている葡萄の蔓から、熟したブドウが垂れているのを見つけます。
狐はその葡萄が食べたくて食べたくて、飛び上がったり助走をつけて飛んだりして、何度も何度も取ろうとします。
でも、どうやっても葡萄を取ることができませんでした。
狐は「おれは何て馬鹿なんだ。あんな葡萄、値打ちもない酸っぱい葡萄なのに。」と言いながら去っていきます。
この物語の場合、狐の「葡萄を取りたい」という欲求と、「葡萄が手に入らない」という事実は矛盾し、認知的不協和が生じています。
この認知的不協和を解消するために、狐は「葡萄は酸っぱくて値打ちがない」というふうに葡萄に対する認知を変えています。
「あの葡萄は酸っぱいから取らない」ということですね。
この例の場合は合理化に当たりますが、コーチングでは認知的不協和の解決方法としてネガティブな合理化を目的としていません。
コーチングにおいて、「現実のリアリティ」と「ゴールのリアリティ」は必ず矛盾し、認知的不協和が生じます。
この、コーチングにおける認知的不協和状態において、ネガティブな合理化(認知の変更)をするのは簡単にできることです。
例えば、ゴールに向かわない理由として、リスクを挙げるときりがないですよね。
コーチングでは、シンプルに「ゴールのリアリティ」を高めて、ゴールへ向かうようにコーチがお手伝いします。
とてもシンプルです。
言い方を変えると、コーチングは認知的不協和を次々と生じさせることで、みなさんがゴールに近づくことができるように働きかけるものと言えます。
また、認知的不協和が全く生じていない状態というのは、「現状の内」ということになるので、ゴールを設定しなおす必要があるということです。
コーチングの過程で、認知的不協和は、当然生じるものです。
認知的不協和によるストレスや不快感を、「人間ってすごいな」と、逆に面白く感じていただければいいなと思います。
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