201705.27

『まほうの質問』

Post by 中西千華 2017年5月27日

公益財団法人五井平和財団の「国際ユース作文コンテスト」から、受賞作品を紹介したいと思います。

今回は、2016年「より良い未来をつくるための教育」というテーマで書かれた文章です。

わたしも子供のとき、母親に質問し続けたのを思い出しました。

9歳の子に、「わたしに続いて!」と言われているような気がします。

『まほうの質問』(原文は英語)

アンゲル・マリア(9歳) ルーマニア・ブカレスト市

私たちは子どもでとても小さかったので、まわりを見回してよく同じ質問をしました。「なぜ?」と。私たちがとにかく質問さえすれば、ふしぎなことにまほうがかかって、よくわかる正しい答えが返ってきました。最初は両親から、その後は先生から。そうやって私たちの問題や疑問は解決されてきました。
私の国ルーマニアでは、子どもはほとんどの時間を学校で過ごし、教養のある人間になるために知らなければならないことを学びます。教養のある人たちは親切で思いやりがあり、他の人のために働きます。
残念なことに、私はテレビのニュースで、十分な食べ物がなく、戦地やひどく汚れた場所でくらしている子どもたちを見たことがあります。母親は子どもを腕にしっかりと抱いて一緒に泣いていて、父親は銃を抱えていました。その子どもたちのためになる物は何もないように見えました。彼らは学校にも行くことができないと思います。
そこで私はまた同じ質問をしてみました。でも、今回はまほうのような答えは返ってきませんでした。悲しみでいっぱいの答えばかりだったのです。「地理的に不利な場所だから」「資源のために戦っているから」「宗教の対立があるから」と、どれも私には理解できない答えでした。さらにもっと驚いたのは、すべての答えに、「どの問題にも解決の方法がない」という言葉が入っていたことです。なぜだかわかりませんでしたが、一つだけはっきりわかったのは、まほうの質問が突然、その力をなくしてしまったということです。
何かをしなければ! 私たち、こんなことを放っておいてはいけないわ!
たくさん考えて、私は子どもたちを助ける方法を見つけました。友達みんなに協力してもらってチームを作り、地球に住むすべての生きものにとってよりよい場所へと、地球を変える計画を始めたのです。私たち一人一人が仲間や友だちをたくさん集めて、みんな一緒になって環境を守り、公害を減らし、天然資源をリサイクルし、むだづかいをしないようにします。そうすれば、私たちのような環境にいる人間が、不利な場所の人たちのために資源をとっておくことができます。
でも、戦争をやめさせるためには、もっと助けが必要でした。両親と話して、人間と思いやりのあるりっぱな行動は強くつながっていて、このつながりが愛や友情、そしておたがいを理解することだと知りました。悲しいことに、この考えを世界中の人と分かち合うのはむずかしいです。ここでまた、まほうの質問「なぜ?」をしてみると、解決の方法が返ってきました。「自分と自分のまわりの人たちをよくすること。そのためには強い意志を持って一生けん命にやらなければならないけど、やがては世界中に広がって、他のことも変えられるようになる」。
今、私はやらなければならないことがわかっています! そして、それを達成するには学校が重要な役割を果たすと思います。
私たちは新しい情報を見つけたり、新しい技術を身につけたり、新しいことを理解するのに、すでに本やコンピューターを使っています。
社会見学をすれば、いろいろな物に対する知識や理解が深まり、勉強のテーマが身近に感じられると思います。また、グループやチームごとにまとまって勉強をすれば、考えを伝え合うことが上手くなって、他の人の意見をおたがい理解したり受け入れたりできるようになると思います。授業には宗教も入れるべきです。世界の主な宗教をすべて解説し、その違いや似ている点を教えるべきです。そうすれば私たちはもっとおたがいを理解できるようになるでしょう。
健康に対する教育もとても大切です。子どもは健康的な食事をとる方法や、応急手当の方法、また人や動物を傷つけてはいけない、助けなければならないということを知っておかなくてはなりません。
心も体も一緒に成長させるために、体育の授業には合気道を入れるといいと思います。合気道は相手を傷つけない日本の護身術で、心と体のバランスを整えてくれます。
また、芸術も子どもがおたがいを理解するのに役立ち、世界の新しい見方を教えてくれると思います。
この計画は私たちみんなにとって本当に大きな挑戦ですが、私たちの後に続く人が世界中でどんどん増えていくと思います。
大きくなってどんなことも最高にうまくできるようになっても、自分自身に「なぜ?」と質問し続けることはとても大切だと思います。答えを探し続けることだけでも、もっとよい人間になれるからです。

reader読者登録

ブログ購読をご希望の方はこちらからご登録ください。

Subscribe2