「なんだか変」を感じる
患者さんが全身麻酔の手術を受けるためには、点滴が必要となります。
病院によって、また、手術の時間帯によって、点滴が入った状態で手術室に入室される場合と、点滴を手術室でとる場合があります。
先日、点滴が入った状態で入室された患者さんに、全身麻酔のための薬剤を2cc、点滴の側菅から投与しました。
薬剤を投与するとき、血管の痛みを感じることがあります。
考えられることとして、投与速度が速いために感じる痛み、薬剤による痛み、点滴が漏れていることによる痛み、などが考えられます。
このとき2cc入れて、痛がるタイミングや痛がり方に「なんだか変」と感じました。
点滴が入っている腕を見ても、点滴が漏れている兆候ははっきりとは分かりませんでした。
ただ、自分が「なんだか変」と違和感を感じた以上、何かあります。
それ以上の薬剤の投与はやめ、点滴をとりなおしました。
結果としては、おそらく漏れていました。
自分がとった点滴であれば確実性は自分の感覚で分かりますが、自分がとったものでなければ、患者さんをよくよく観察しないと分かりません。
「なんだか変」と感覚で捉える感性を養ってください。
そのためには、あらゆる事象やモノを深く観察する習慣をつけることが必要です。
よくよく観察して、あなたの全身を用いて、”本質”を見てください。
術中覚醒
今日の麻酔勤務中に、術中覚醒の話が出ました。
術中覚醒というのは、全身麻酔の手術中に患者が起きている事象を指します。
トレーニングされた麻酔科医が担当していれば通常起きませんし、麻酔科医にとっても術中覚醒は絶対に起こしたくない事象です。
術中覚醒では、患者は起きているので、音はクリアに聞こえます。
鎮痛がきちんと出来ていれば、痛みは感じませんし、鎮痛が不十分であれば痛みを感じます。
筋弛緩薬が効いていれば患者は動くことができず、金縛りのようだと形容されることがあります。
もし、筋弛緩薬が効いていて、鎮痛が不十分、かつ覚醒している場合…
患者は、想像を絶する恐怖の中に閉じ込められると考えられます。
ふと、今の日本には、術中覚醒のような人生を送っている人が多くいるのかもしれない、と思いました。
しかも、自分では気付かないまま、縛られた日々を過ごしていることがあります。
時々、自分の状況を客観的に眺める習慣をつけるといいかと思います。
毎日、やりたいことをして過ごしていますか?
今、ワクワクしていますか?
そして、今、自由ですか?
麻酔器とゴール
これまで何千件と麻酔をしてきた中で、今日は初めて、麻酔器の電源が手術中に切れました。
電球が切れるような切れ方で、うんともすんとも言わなくなりました。
麻酔器とは、全身麻酔中に患者さんに呼吸をしてもらうためのツールです。
吸入麻酔薬は使う時と使わない時があります。
通常全ての麻酔器は、停電の際にも酸素など各ガスは流れる構造になっています。
電源が切れたとき無意識下で瞬間的に起きたこととして、
1.電源が切れた瞬間、私の超短期的なゴールは、「患者さんに適切に呼吸してもらい、問題なく手術が終わる」ことに設定されました。
2.このゴール達成のための手段が自分の中で2個浮かびました。
この瞬間に無意識の中でゴールは達成されていました。
落ち着いてから、麻酔器に黄色い「パニックカード」が貼ってあるのを見ました。
どの麻酔器にも、停電時に麻酔科医がパニックにならないように貼ってあるもので、
分かり易く言うと「停電時でも酸素は流れますよ」と書いてあります。
今日経験した超短期的なゴール設定は、普段のゴール設定とも通じています。
私の中で「患者さんに適切に呼吸してもらい、問題なく手術が終わる」というのは微塵の疑いもない確信でした。
ゴールとは確信するものです。
その後は無意識が最適な方法へ導きます。
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